ノンケミカルレモンって? 皮は食べても大丈夫なの?

皮ごと食べられるレモンを探していたらノンケミカルという商品を発見。
美容品のようなこの表示、食品に付く場合は一体どういう意味なのでしょう。

気になったのでまた調べてみました。




ノンケミカルレモンとは


ノンケミカルレモンは化学薬品不使用のレモンをいいます。
化学薬品とは主に防カビ剤を指します。

防カビ剤は農薬ではなく、収穫後に散布される薬剤(ポストハーベスト)です。
防カビ剤については、以下の記事を参照してください。


これは防腐処理に該当するため、保存料と同じく食品添加物に分類されます。
そのため、”ノンケミカル”ではなく”無添加”レモンと表記されることもあります。

注意したいのは、ノンケミカルと言えども無農薬ではないということです。
収獲後に薬剤未使用でも、栽培中に農薬が使用されている可能性があります。

果物を皮ごと食べるには無農薬のものが理想とされています。
防カビ剤以外にも、化学肥料・防腐剤・除草剤・ワックスも避けなければなりません。

ノンケミカルは十分に洗えば皮ごと食べられます。
しかし化学薬品にアレルギーを持つ人には無農薬レモンの方がより安全です。

また防カビ剤不使用のレモンは甘みの強いニュージーランド産が一般的です。
酸味が好きな人であれば味に対して不満が出るかもしれません。

国産レモンも農薬まみれ


残留農薬については外国産のイメージが強いですが、国産も例外ではありません。
実は国産でもポストハーベストを行うことがあります。

防カビ剤ほど強力ではないものの、防腐剤として臭化メチルが散布されます。

これは見た目では区別できないので店員に確認するしかありません。
表示義務があるため必ず教えてくれるはずです。

ワックスが塗られていることも多く、そのまま食べるには適していません。

試しに国産レモンに農薬を落とすスプレーをかけてみてください。
ワックスは溶けると白濁するので色で確認できます。

収穫前にも鮮度を保つためにカルシウム剤が撒かれることがあります。
たまにこれが乾いて皮の表面に残っています。

擦れば取れますが、国産でも洗わないといけないということが分かります。

このように完全無農薬は国産でも稀で、大半は農薬を3~5割抑えた減農薬栽培です。
そうした農薬を削減する栽培法を「特別栽培」と呼びます。

では、よく聞く「無農薬」「有機栽培」とはどういうものなのでしょうか。

無農薬栽培とは


無農薬とは「栽培期間中に農薬を使用していない作物」を指します。
農薬とは一般に防虫剤や除草剤のことを言います。

が、この規定は土壌の質までは考慮されていません。
今期は無農薬でも、以前に使用していれば土壌に残留している可能性があります。

それは少なからず作物の生育に影響を与えます。

しかしながら、前期の使用歴まで消費者には分かりません。
畑の土壌検査をしなければ、本当の意味で無農薬かどうかは断定できないのです。

現在は誤解を避けるため「無農薬」という表示を改めることが推奨されています。

代わりに「特別栽培農作物」「栽培期間中農薬不使用」と記載されています。
あるいは「最低必要減の農薬を使用」とはっきり明記されています。

つまり、無農薬=特別栽培です

ところが、商品棚に陳列する前にも小売店で何らかの薬品が塗られることがあります。
その場合も表示が義務付けられているので、外袋や棚のポップで確認ができます。

基本的に正真正銘の無農薬は高価なため、値札だけでも見分けられるでしょう。

有機栽培とは


有機栽培は有機JAS規格を遵守し、さらに登録認定機関から認可を受けた作物です。
商品のパッケージに「有機JAS認証」マークが付いているのが目印です。

規格は農林水産省の制定で、土や農具に化学物質が付着していないことが大前提です。
禁止農薬や化学肥料の使用を最低でも2年以上控えた畑でしか栽培できません。

もちろん、遺伝子組み換えや防虫剤も不可です。
こう聞くと完全無農薬ですが、有機JAS法で未規制の農薬は使用可能なのです。

禁止されていないため、使用しても有機JAS認証を取得できます。
そうなるとこれもまた無農薬か否かの判別が難しくなります。

認定機関も人間なので、検証をおろそかにしていることがあるかもしれない。

ただ日本では、使用した農薬と使用量を防除履歴としてJAに提出する義務があります。
これを提出しないと荷受けされないため、一定の品質は保証されています。

無農薬のデメリット


無農薬レモンを入手する方法はAmazonなどのインターネット通販が主となります。
ノンケミカルやエコレモン、ニュージーレモンといった語句で検索してください。

訳あり商品なら無農薬レモンを安く購入することができます。
これは非常に便利ですが、無農薬にはデメリットもあります。

・虫や菌が付きやすい
・稀少で高価
・形が不揃い、皮に傷が付いている
・消費期限が短い
・アレルギーを誘発する

レモンの島と言われる生口島でさえ、無農薬栽培はごく僅かしか行われていません。

完全に無農薬となると虫を人力で除くことになります。
そこで取り損ねたのか、購入した商品に虫が付いていることがあります。

除草も鳥や動物を畑に放して草を食べさせるといったことが行われています。
結果として生産量が限られ、収穫期間も短いため価格が上がり入手しにくくなります。

さらに防腐剤が塗布されていないので傷みやすく、すぐに使い切る必要があります。
カットしたレモンは三日以内には消費しなくてはなりません。

カビが生えていれば、菌糸が果肉にまで及んでいることがあるので捨ててください。

また、農薬に頼らない環境では植物自体が身を守るために毒素を生成し始めます。
敏感な人が口にした場合、アレルギー反応が出ることもあるようです。

農薬を使わないことで野生種に近付き、却って有害になることもあるのです。
以上のことから、毎日食べるのでない限り輸入レモンで十分とも言えます。

そうは言えど、他の作物よりも丹精を込めて育てられていることは確かです。
いくら不便な点があっても、味や果肉の厚みに価値を見出せるでしょう。

斑点やブツブツで皮が汚い


完全無農薬のレモンは、表面がぶつぶつで黒や茶色の斑点が付いています。
ワックスも塗っていないので光沢がありません。

しかしこの不器量な見た目こそ農薬に頼らず栽培した証です。

斑点が多いと香りや食感も悪くなりますが、食べても害はありません。
生育中に中腐りしていない限り、黒い点が付いていても果肉はきれいなはずです。

気になるようなら斑点の部分は取り除くか、果汁のみ使用してください。

一般的に、植物の病原菌が人間に感染することはないと言われています。
ただし、収穫後に繁殖したカビは強力な毒素があるので絶対に口にしないでください。

A品なのに見た目が悪い


農園の通販サイトでA品とB品の二種類の商品が販売されていることがあります。
これはレモンの状態を表すランクです。

無農薬商品の場合は栽培方法の都合から形の悪さや傷は避けられません。
そのため、状態が軽微であれば良品に分類されます。

つまり、病気に感染していても被害が一部であればA品として販売されるわけです。

Aランクだからと言って過度に期待しないようにしましょう。
絵に描いたようなきれいな状態を望むならば、通常栽培のレモンを購入してください。

皮ごと使うなら無農薬レモンが推奨されますが、料理の見た目が多少悪くなります。
場合によってはママレードに黒い点が混ざる可能性があります。

B品は食味に影響が出ない程度とは言え、表皮に病害の痕が目立ちます。
気になる箇所は包丁で取り除くしかありませんが、安価で無農薬商品を入手できます。

定期購入するならB品の方がお得です。

黒い点は病気の痕


皮の表面の斑点は、かいよう病か黒星病(黒点病)が原因です。

かいよう病の痕は黒か茶色の円形で、コルクやかさぶたのように乾燥しています。
ミカンハモグリガの幼虫に噛まれたところから‟かいよう菌”に感染し発生します。

もしくは、台風などの強風にあおられて付いた傷から菌が繁殖します。

目視できないような小さな傷からも拡大するので予防が難しいと言われています。
あまりに病害が目立つと売り物にならず、訳あり商品でも目にすることは稀です。

次に黒点病とも呼ばれる黒星病は、カビの一種に感染することで発生します。

一見するとレモンの表面にそばかすが広がっているように見えます。
食べても無害ですが、商品価値が下がるので加工用に回されるのが一般的です。

たまにサクレアイスに乗っているスライスに黒い点が見られます。

カビによる植物の病気はいくつかあり、炭疽病もその一種です。
ほかにカイガラムシやアブラムシの排泄物が原因で感染するすす病などもあります。

しかしレモンの変色する理由が病気ばかリとは限りません。
例えば酸化による褐変です。

包丁でカットした後、暫くすると果肉周辺が酸化して茶色くなります。
包丁を入れていなくても、冷蔵する際に袋に入れていないと皮が傷みやすくなります。

こうした変色も無害ですが、味が落ちるので早めに消費してください。

完全無農薬レモンの入手方法


完全無農薬レモンを確実に手に入れる手っ取り早い方法は、自分で育てることです。
アレンユーレカクックユーレカなど、家庭菜園に適した品種が販売されています。

レモンは病害に弱い繊細な植物で、無農薬で育てるには手間と根気を要します。
カビや虫のほか寒さと風が大敵で、雨が少なく温暖な気候の土地を好みます。

皮の表面が滑らかになるように育てるには、木の内側に実が付くようにしてください。

ただレモンの木には棘があり、内側の実は傷が付きやすくなります。
その傷から菌が入り病気になるので、枝が触れないように剪定と防風対策が必要です。

剪定すると日当たりと風通しも良くなります。

防風は風によって運ばれてくるカビ避けにもなり、黒点病予防にもなります。
この点で、ハウス栽培は風の影響を受けにくいので有利です。

また、かいよう病の原因となるハモグリガにも気を配らなくてはなりません。

ハモグリガの幼虫はレモンの木の若芽を食べに来ます。
幼虫は初夏から活動が活発になるので、夏以降の新芽はすぐに摘み取りましょう。

かいよう病と黒点病に感染した枝は除去して、畑から遠くに捨てます。
木を弱アルカリ性に保つことも病害虫対策になります。

その他にすす病を招くアブラムシとカイガラムシや、ダニの寄生にも注意を払います。
柑橘類に寄生するダニはサビダニチャノホコリダニと呼ばれるものです。

ダニは肉眼で確認するのは困難なため、発生したら手遅れと言われています。
農薬なしで防虫するには、ルーペ片手に絶えず葉の裏を確認するしかありません。

しかし近年では病気に強い品種や耐寒性に富む品種、棘が少ない品種もあります。

園芸初心者には「璃の香(りのか)」「ビアフランカ」がおすすめです。
自分で育てる労力を知れば、国産の値段にも納得を得られるかもしれません。

まとめ


✔ ノンケミカルとは防カビ剤不使用を意味し、ニュージーランド産が代表的。
  皮ごと食べられるが、産地や品種によっては甘味が強い。

✔ 防カビ剤不使用は完全無農薬という意味ではない。
  完全無農薬は国産でも入手困難。

✔ 基本的に無農薬とは「農薬控えめ」という意味で完全未使用ではない。
  本物の無農薬レモンを得るには自分で栽培する覚悟も必要。

✔ オーガニック栽培にもデメリットがあり、病害の痕が目立つ。
  黒い斑点は食べても無害だが、気になるなら取り除くこと。

✔ 果汁のみの使用であれば輸入レモンでも問題ない。