ゼストとピールの違いは? 使い方も一緒に解説

お菓子のレシピで見掛ける”ゼスト””ピール”
どちらもレモンかオレンジの皮ですが、なぜ呼び方が違うのでしょう?

また、他の果物の皮は使えるのかも気になったので調べてみました。



語源はフランス語


レモンゼストとは、レモンの皮のすりおろしのことです。

皮の方が香り成分(リモネン)が豊富なため、エッセンスとして利用されます。
代表例がチーズケーキやマドレーヌです。

ゼストの語源はフランス語で、「果皮」を意味します。
英語圏の料理用語はフランス語をそのまま取り入れているため、英米でも通じます。

皮むき器がゼスター(Zester)と呼ばれるのはこの単語が由来です。

皮をすりおろす作業は、英語でゼスティング(Zesting)と言います。
ピーラーも英語のピール(皮)と関連があります。

ただし英語では”zest”、フランス語では”zeste”と綴ります。
また、フランスではレモンではなくシトロンゼストと呼びます。

レモンピールは”zestes de citron (ゼスト・ド・シトロン) ”です。
因みにライムは”Citron vert(シトロンヴェール)”と言います。

料理と関係のない使い方


香りのよい柑橘類の皮は、心地よい刺激と酸味を添えるアクセントになります。
そこから、英語のZestには「醍醐味」「興趣」といった意味が備わりました。

現在では「意欲」や「活力」、「歓び」を表す名詞になっています。
これは酸味が食欲を刺激することに因んでいるのでしょう。

レモン皮は蒸留酒に漬けるとリモンチェッロになり、カクテルの飾りとしても人気です。
アジアでも漢方の枸櫞皮(くえんひ)として古くから親しまれてきました。

表皮のほか、内側の白い部分と種もペクチン作りに使えるなど汎用性の高い果物です。
料理用語が日常語になったのは、それだけ人々に愛されてきたことの証と言えます。

ピールとの比較


ゼストはフランス語で「果皮」ピールは英語で「皮」を意味する単語です。
言語学的には大きな違いはありません。

しかし、日本語のレシピにおいては皮のどの部分を使用するかで呼び分けています。

ゼストは外果皮(フラべド)と呼ばれる、果物の表皮のみを削ったものを指します。
基本的に香りを得ることが目的で、その香りのもとがフラべドに含まれているためです。

皮を削るにはレモンゼスターという特別な調理器具を使用します。


>> レモンゼスターの使い方とレモンゼストの代用品


ピールの場合は表皮の下の白いわた部分、中果皮(アルベド)も含みます。
ただしアルベドには苦味があるため、好みに応じて取り除かれます。

作り方と使い方が違う


ゼストが果物の表面を擦りおろすのに対して、ピールは皮を包丁で刻みます。

さらに、そのまま使われるよりも砂糖漬けなど保存食に加工するのが一般的です。
対してゼストの方は、すり下ろしたらすぐに料理に利用されます。

ミカンとオレンジを見ても分かるように、柑橘類は種類ごとに皮の厚みが異なります。
皮が薄いものは中果皮も少ないため、表皮だけでなく全体を使用できます。

例えば、陳皮はマンダリンオレンジの皮を丸ごと乾物にしたものです。
主に中華料理の調味料として使用されます。

中果皮の味もグレープフルーツは苦く、ライムは仄かに甘いなど微妙な差異があります。

しかし苦いと言われるそれを私は甘く感じるので、個人の舌によりけりでしょう。
繊維質の食感が好きな人であれば御馳走になります。

レモンの場合は、苦すぎず甘すぎない丁度良い塩梅です。
苦味のあるマーマレードが好みという方は、中果皮を多めに残して作ってください。

レモン以外の柑橘類を使うのも一興です。

ぜひ、柚子ブンタンのゼストorピールを使ってみてください。
洋菓子に少し和の香りを添えることができます。

レモンゼストの使い方


レモンの香味だけを料理に取り入れたい時にゼストは役に立ちます。
定番のお菓子だけでなく、飲み物から肉料理やフライにまで幅広く使用できます。

たくさん入れるとスパイシーになるので、子供が食べる時は量を加減してください。
液体に混ぜる時は、香りが薄まらないように大きく太めに削ってください。

ベリー類と相性が良いので、一緒にしてジュースやジャムにしても美味しいです。

ドリンク


飲料水と混ぜればレモン水に、お湯を注げばホットレモンになります。

レモン白湯は血行促進を含め健康効果も高くおすすめです。
そこにゼストを入れることで風味を向上させることができます。


レモネード


ミネラルウォーターか氷水にレモン果汁と共に少量混ぜます。

レモン汁にはカルキ抜き効果があり、水が飲み易くなりますよ。
水道水の塩素臭が増す夏場に水分補給も兼ねてお試しください。

蜂蜜を入れれば、はちみつレモンになります。
さらに塩を少し追加するとスポーツドリンクに早変わり。

蜂蜜はネクタフローのオレンジのハチミツがおすすめです。
甘さ控えめがお好みならレモン汁2:はちみつ1:水10の割合でどうぞ。

蜂蜜の代わりにレモンの蜂蜜漬けとオリゴ糖でも作れます。
もちろん、ノンシュガーでも構いません。

妊娠中の人にはホットレモネードが一番です。

お湯200㏄にレモン汁大さじ1、はちみつ大さじ2を混ぜてください。
蜂蜜がなければシロップなど別の甘味料でも構いません。

グレナデンシロップを混ぜればピンクレモネードになります。
また、生姜湯にゼストを入れると風邪予防の効果が倍増します。


スカッシュ


炭酸ミネラルウォーター(クラブソーダ)で作ると夏にぴったりの味になります。
作り置きレシピは、ソーダ水1リットルに対しレモン汁50㏄、シロップ50㏄です。


お茶


紅茶やハーブティーブレンドとの相性も良いです。
酸味はなく香りだけを移すことができます。

特に会うのがペパーミントティーです。

レモン汁とオリゴ糖を大さじ1混ぜてください。
ニガリ数滴とチューブの生姜を1cmほど追加すると便秘対策になります。

ただし、レモンの皮は長くお湯に浸けると苦味が出てきます。
できるだけ早くお茶から出しましょう。


コーヒー


細かく刻んだゼストをカプチーノやエスプレッソと合わせてみましょう。
スターバックスでも、期間限定でレモンゼストマキアートが販売されたことがあります。

エスプレッソにゼストとシナモンを漬けこんでスチームしたミルクを合わせたものです。
これに、同じくゼストを漬けたミルクがチェイサーとして一緒に提供されました。

ただし、コーヒーとゼストを合わせるには豆選びが重要です。
レモンゼストマキアートではフルーティーな風味のホンジュラス・ラ・カンパでした。

柑橘類と相性の悪いコーヒー豆で作ると悲惨な結果になります。

上手くいけば、ホットドリンクなのに爽やかな後味という不思議な飲み物になります。
コーヒーが好きな人は新境地を開拓してみてください。


モクテル


モクテルとはノンアルコールカクテルのことです。

市販の炭酸ジュースで割ればレモンソーダの完成です。
コーラや三ツ矢サイダー、ペリエにレモン汁大さじ1とゼストを混ぜてください。

飲むヨーグルトに入れればラッシー(カルピスレモン)を楽しめます。
スポーツドリンクと合わせて夏バテ対策にするのも良いでしょう。


野菜ジュース


人参とリンゴで作るジュース。
バナナと牛乳、はちみつ、ヨーグルト、黒ゴマで作る黒ゴマバナナジュース。

こういった特製ジュースには、アクセントにレモン果汁を入れるものです。
レモンゼストも入れれば、その効果を増すことができます。

青汁も飲み易くなりますよ。
青臭さが残る場合は、氷で冷やすとえぐみが薄れます。


カクテル


リキュールや特定の蒸留酒を作るのにも、ゼストが用いられることがあります。
甘口の白ワインで作るサングリア・ブランカが有名です。

お手軽なのは、焼酎やビールで作るレモン割りです。

更に手っ取り早く、市販のレモン酎ハイに入れるのもアリです。
ジンのソーダ割りにも合います。

ビールはラガーではなくピルスナー推奨です。
本場ドイツやベルギー風になりますよ。

また、カクテルでよく見る螺旋状のレモンの皮は”ツイスト”と呼ばれるものです。
グラスにレモンの皮を添えると、装飾になるだけでなく香りも付加できます。

より強く香りをつけたい時は飾り切りにはせず、ゼストをそのままお酒に漬けます。

料理


料理では主に、薬味として活躍します。

パンケーキやヨーグルトのトッピングが定番ですね。
クラッカーにチーズと乗せたり、酢の物やグラノーラに混ぜることもできます。

その他では、肉や魚の臭み消しにも利用されます。
柚子皮と同じように鍋料理に入れてもOKです。


トースト


チーズの濃い風味を、さっぱりとしたレモンの香りで調整します。
アボカドでも同じ効果を発揮します。


パスタ


ゼストはチーズケーキに使うだけあり、チーズ料理全般に合います。

特にカルボナーラやペペロンチーノといったパスタ類、リゾットにおすすめです。
先に書いたように、油脂を酸味で中和してくれます。

更に、レモンの香味はスパイスの刺激に相乗効果をもたらします。


サラダ


ポテトサラダやキャロット・ラぺ(人参サラダ)に和えると爽やかな風味になります。
刻んだハーブと一緒にサラダに混ぜると味わいが増し、パンとの相性も抜群。

人参サラダは、ゼストと共にレモン果汁も一緒に混ぜることで味が引き締まります。
マリネのほかカルパッチョでも試す価値ありです。


フライ


青のりやバジルと同様に衣に混ぜることができます。
揚げたゼストの食感と、微かな苦味が食欲をそそります。

その上に更にゼストとパルメザンチーズをトッピングしても美味しいですよ。


肉料理


オッソ・ブーコやソテーに挙げられるような肉料理にもよく使われています。
牛肉のほかに鶏肉、またシーフードと合います。

レモンの成分には肉を軟らかくする効果もあります。


野菜のグリル


野菜は火を通すと甘味が強くなりアクセントに欠けます。
そこで、塩・チーズ・レモンゼスト・オリーブオイルで味を調えてみましょう。

これを野菜のソテーやベイクドポテトに掛けると後味まで楽しめます。


調味料


ソースやドレッシングに混ぜるという使い方もあります。
揚げ物や焼き魚はもちろん、焼肉から冷や奴まで洋食・和食問わず利用できます。

おろし大根にレモン果汁と一緒に混ぜると見た目もきれいです。
そこに醤油を少々和えるとポン酢代わりにもなります。

ドレッシングは、エクストラバージンオイルやニンニクベースのものと相性が良いです。

お菓子


デザートに関してはあまりに例が多いため、箇条書きにしました。


クリーム



アイシング
カスタードクリーム
スフレ
デザートソース
バタークリーム
レモンカード
レモンクリーム


フロスティングやフィリングになるクリーム、クッキーを飾るアイシングの味付けに。
苺ソースなど、レモン以外のフルーツソースとも合います。

レモンカードはゼストと砂糖、卵、バターの同量をレンジで加熱するだけで作れます。
完成したものは生クリームと合わせてロールケーキやウィークエンドに使えます。

また、カッテージチーズなどフレッシュチーズに乗せても美味しいです。
チーズがなければ水切りヨーグルトで代用できそうです。


パン



デニッシュ
バゲット
パネオーネ
メロンパン



ホームベーカリーで作るパン生地に混ぜると一味変わります。
生地の上にクリームチーズとレモンゼストを乗せて焼くのも美味しそうです。

少し変わった例は、バゲット生地に入れるビタミンCの代用です。
レモン汁と一緒にゼストを入れるのも一興かもしれません。

しかし、ショコラパンやブラウニーの場合はオレンジゼストの方が合います。
カカオと柑橘類の風味はコーヒーのお供に最適です。

もしくは、アップルプレザーブやジャムの酸味と香りづけにも使用できます。
少し香りが足りないと感じた時にお試しください。


ケーキ



ウイークエンドシトロンケーキ
カップケーキ
ガレット
シフォンケーキ
シュトーレン
スポンジケーキ
チーズケーキ
チョコレートケーキ
パウンドケーキ
バナナケーキ
パンケーキ
ブラウニー
フルーツケーキ
ベークドチーズケーキ
マドレーヌ
マフィン
レアチーズケーキ


フルーツケーキはレーズンと一緒に漬け込みます。

ホットケーキの生地に混ぜ込むとカフェの味に。
バターケーキ類はチーズケーキ味に。

マフィンはバターの半量を生クリームに置き換えると、焼き上がりがふんわりします。

しっとりさせたい場合は、ホワイトチョコを混ぜるかメレンゲで膨らませてください。
逆に歯ざわりを良くするには、粉を米粉か強力粉に変更します。

仕上げにレモン型に流し込んで焼けば贈り物に最適です。

仕上げにはレモンチョコやレモングレーズを掛けます。
トッピングにゼストを掛けた場合は二日ほどで食べきりましょう。

夏はグリーンレモンのゼストを使うのもおすすめです。

スポンジケーキは薄力粉だけで焼くと、あまり高さが出ません。
高さのあるケーキを焼きたい時は、薄力粉と強力粉を半々で混ぜてみましょう。

チーズケーキはチーズを変えることで風味をアレンジできます。
例えば、ヤギ乳のフレッシュチーズを使えばコルシカ島名物のフィアドンになります。

レモンシフォンケーキはゼストの代わりにレモン汁を入れても構いません。

ベーキングパウダーとレモンのクエン酸が反応して、通常よりふんわり焼き上がります。
またケーキ自体がほんのりレモン色になり、見た目にもきれいです。


タルト・パイ


チーズタルト
メレンゲタルト


フィリングをレモンクリームにするとレモンタルトになります。
そのレモンクリームを本格的な味にしたい時にゼストを混ぜます。

酸味が欲しい時は絞り汁を大目に入れてください。
まろやかな風味にしたい時は生クリームを少量入れます。

レモンクリームは単純にパイ皮に乗せて焼いてもデザートになります。
その上にメレンゲを乗せてオーブンで焼けばメレンゲパイの完成です。


クッキー


チュイル
ビスケット
サブレ
スコーン
ラングドシャ
焼きメレンゲ


レモンクッキーのほか、チョコチップやナッツと一緒に生地に混ぜても良いでしょう。
ココアクッキーやチュイルの生地と合わせることもできます。

缶に詰めれば日持ちするので作り置きのおやつになります。

先にも書きましたが、薄力粉の代わりに米粉を使うとサクサク食感に仕上がりますよ。
その口当たりにはレモンの香りがベストマッチなのでおすすめです。


冷菓


アイスクリーム
ジェラート
ソルベ(シャーベット


ソルベとはシャーベットのことで、グラニテもその一種です。
レモン果汁だけでなくゼストを入れると微かな苦味で大人の味になります。

作り方は、材料を鉄製のバットに敷き詰め冷凍庫に6時間入れておくだけです。

ただし、2時間ごとに取り出してフォークで掻き混ぜる必要があります。
それを計三回繰り返します。

完全に凍る前に何度も掻き混ぜることによって、シャーベット状になります。
放っておくとただの製氷になってしまうので注意してください。

そのほか



キャンディ
ゼリー
チョコレート
プディング
ムース
ギモーヴ(マシュマロ)


レモンチョコレートや、溶かしたチョコにゼストを混ぜても良いでしょう。
コーヒーのフードペアリングになります。

ゼストの代用でレモンパウダーやオレンジゼストに置き換えることもできます。

まとめ


長くなったので、最後におさらいします。


どちらも果皮だが、使う場所と使い方が違う

ゼスト→ 表皮のみを削り、すぐに使う
ピール→ 柑橘類の剥いた皮全体を包丁で細かく切り、砂糖漬けなどにする

一方で、カクテルの飾りやトッピングになる点は共通しています。


ピールは英語

フランス語ではどちらも”ゼスト”と言います。

また、英語の”ゼスト”とフランス語のそれとはスペルが一文字違います。
”zest"”zeste”の違い。)

英語で単純に「果物や野菜の皮」と言う時は”ピール”が一般的。
ピールを剥く道具がピーラーです。

更に、英語の”zest”には複数の意味が備わっています。

その一つが”醍醐味”
日本語の醍醐味も乳製品が語源で、やはり食べ物にまつわる言葉です。


用途が膨大

飲み物、料理、パン、お菓子、ジャム、ソースなどなどフルコースで活用できます。

チーズやベリーと組み合わせて隠し味として楽しむもよし。
この機会に万能調味料として色々試してみてください。

柑橘類が苦手でなければ、どれと一緒に食べてもハズレはないはずです。