レモンの皮の農薬の落とし方 ※ただし国産に限る

その昔、残留農薬ランキングのワーストテンでレモンが一位になったことがあります。
そのあと一時的に喫茶店からレモンティーが消えるほど大騒ぎになりました。

今でもレシピには「皮ごと使うので国産のものを使用」と書かれていますよね。
飲食店でも厨房でレモンがゴシゴシと洗われています。

皮まで食べないレモンティーのスライスでも、そこまでしないと使えないのです。




【補足】残留農薬とは

残留農薬とは生育中に畑に撒いた薬が出荷後にも残っている状態を言います。

農薬は主に殺虫剤や殺鼠剤、忌避剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤、展着剤です。
特殊な例では、養蜂など虫に対して誘引剤という薬剤が使用されることもあります。

他にも土壌の菌やウイルス、虫や埃が付着している可能性も拭えません。
調理前には農薬の使用・未使用に関わらず必ず洗ってください。

洗い方は5パターン


以下にまとめた洗い方は国産のレモンを対象にしています。

毎回繰り返すことを考えて、自分に合った方法を選択してください。
洗い終わったら清潔なタオルやキッチンペーパーで水分を拭き取り乾燥させましょう。

水洗い


水溶性の農薬であれば流水で30秒ほど洗うだけで流れ落ちます。
水道水熱湯オゾン水電解水食品用洗浄水で洗ってください。

洗浄水は炭酸カリウムと純水が原料で、殆ど水道水と変わりません。
Amazonでベジセーフやベジウォッシュといった商品を購入できます。
噴き掛けて約2分置いたあと、全体を撫で洗いするだけで汚れを落とすというものです。

ただし電解水も洗浄水も少し値が張り、更に不溶性の農薬は水洗いだけでは落ちません。
水洗いは果汁のみ使用する時の処理法と考えてください。

皮ごと使う予定であれば更にしっかりと洗う必要があります。

浸けおき


水溶性の農薬酢水・塩水・重曹水・野菜用洗剤に浸けておくだけでも落ちます。

酢と塩にはアク抜き作用が、重曹はワックスを分離させる作用があります。
レモン汁でも同様の効果を得られます。

まず、800mlの水に対し大さじ4の塩レモン半個分の果汁を混ぜた水溶液を作ります。
そこに果物を10分ほど浸けた後に取り出し、水かお湯で洗えば完了です。

重曹の場合も上記と同量の水に溶かし、1~3分ほど浸けます。
分量はレモンの個数に応じて変わり、目安は一個に付き大さじ1です。

重曹が毒素を吸着させる効果は塩の約30倍と言われ、浸け過ぎると栄養素まで落ちます
特にタンパク質が破壊されてしまうので注意してください。

一方で食用重曹の洗浄力は低いため、酢水や塩水の方が効果的という意見もあります。

野菜用洗剤は除菌効果を持つ、高アルカリ性の貝殻やサンゴを粉末状にしたものです。
環境や手肌に優しく、野菜洗い以外にも幅広い用途に利用できます。

有名なものは以下の五つです。

ホタテの力くん
ベジクリーン150
ピリカレ
エルフィンサンゴ
安心やさい

高価ですが、1リットルの水に対し小さじ1しか使用しないのでコスパは悪くありません。
15分ほど浸け置きしたら洗い流すだけという手軽さも魅力的です。

重曹を含むアルカリ性の成分には油性の汚れを親水化・分解する効果があります。
アルカリ性は酸性の農薬を中和し、酢やレモン果汁には殺菌効果もあります。

浸け置きした後の水は掃除に再利用しましょう。

こすり洗い


たわしスポンジブラシのいずれかで皮の表面を磨く方法です。

塩には研磨作用があり、皮の凹凸の汚れやワックスを擦り落とします。
粗塩湿らせた食塩をスクラブにしてレモンの表面を揉み洗いしてください。
重曹も同様に湿らせてから使い、擦りにくい時は水を足してください。

揉み洗いを二回ほど繰り返したらお湯にくぐらせて、仕上げに流水で洗い流します。
揉み洗いの後にもうひと手間、上記の浸けおきを行うとより効果的です。

たわしとスポンジは擦りすぎると皮の表面を傷つけるため、力加減に注意してください。
また、小ぶりの実は手元が安定しないので均等な力で磨くのは難しいかもしれません。

余談ですが、ワックスだけならアルコールでも落とすことが可能です。
度数の高いお酒を沁み込ませた布巾で拭けば、ワックスの成分を溶かしてくれます。

食器に付着したワックスを落とすには界面活性剤入りの洗浄剤を使ってください。
クリームタイプは少量を布巾につけて食器を磨き、最後にしっかり洗い流せば完了です。

洗剤で洗う


食器用洗剤(中性洗剤)で洗っても大丈夫です。
洗剤で洗えばワックスや農薬の他に雑菌も除去できます。

食器洗剤のラベルに「野菜・果物・食器・調理器具等の洗浄」と書かれているはずです。
その中から無香料のものを選び、清潔なタワシを用意して丁寧に洗ってください。
ただし、皮に傷が付くと洗剤が滲みこんでしまうので擦りすぎには注意が必要です。

最初に熱湯に浸け、洗う時もぬるま湯を使うとよりきれいになります。
最後にしっかりすすぎ、皮の表面がツルツルになっているかを確認してください。
ワックスが残っていると油汚れに触れたようなニチャニチャした手触りがします。
もし粘り気を感じたら洗い直してください。

この洗い方は残留農薬を大幅に落とせる一方でレモンが傷みやすくなります。
それというのも、農薬そのものが保存料の役割を果たしているからです。
洗浄後は直ちに調理しないとカビが繁殖してしまうので気を付けてください。

また、果皮の奥に滲みこんだ薬剤までは落とせないので過信してはいけません。

50℃洗い


食材を沸騰したお湯に30秒ほど浸けて湯がく調理法を「茹でこぼし」といいます。
野菜などを茹でこぼしすると、農薬をほぼ完全に除去できると言われています。

レモンの場合は60℃以上の温度でツヤと栄養素を失うため、50℃洗いがおすすめです。
ワックスは50℃程度のお湯で落ちるので十分に効果を期待できます。

沸騰したお湯に同量の水を混ぜると、ちょうど50℃くらいになります。
あとは温度計を頼りに温度を保ちつつ、数分茹でててください。

完熟レモンなら5分、青いレモンなら10分が目安です。

こう言うと簡単そうですが、5分以上も温度を一定に保つのはなかなかに大変です。
おまけに43℃以下になると却って雑菌の繁殖を招くというリスクもあります。
果物を加熱することで調理後の味や食感にも影響が出るかもしれません。

50℃洗いは鮮度を蘇らせる効果がありますが、継続するにはやや面倒なのが難点です。

洗っても落ちない?!


初めにも書きましたが、以上はあくまでも国産レモンの洗い方です。

輸入レモンに付いた薬剤は水洗いをしても3~7割しか落とせません。
洗剤も他の食品や食器に農薬が付着するのを防げる程度です。

なぜなら、外国産の柑橘類に使用される防カビ剤の多くが不溶性だからです。

流水で落ちるのは5%、熱湯で茹でても減少率は25~35%前後です。
水溶性であれば15分煮ることで皮の精油成分と共に溶け出して9割除去できます。
それを見越してママレードを作れば調理過程でかなり低減します。

しかし完全に無くなるわけではなく、果肉まで防カビ剤が浸透していることもあります。
防カビ剤とワックスを混ぜたものにレモンを漬けこんでいる場合は特に落ちにくいです。

基本的に輸入レモンの皮は食べない方が良いです。

果物の表面や先端は農薬が残留しやすく、なかでもヘタの周辺が危険です。
これはバナナやリンゴにも共通しています。
柑橘類は皮の油分と農薬が混ざり合ってしまうため、皮は厚めに除いてください。

また、輪切りにすると防カビ剤の溶出を後押しすることになります。

洗っていない輸入レモンの輪切りを紅茶に浮かべると、防カビ剤がお茶に溶け出します。
時間が経つほど溶出し、1分後には70%以上も溶け出してしまいます。
国産でない限り紅茶に入れたレモンは出来るだけすぐに取り出しましょう。

調理で輸入レモンに触れた後も手をよく洗ってください。

ワックスよりも怖い防カビ剤


ワックスは農薬ではなく被膜剤という食品添加物です。
更に、テカテカやべたつきが必ずしも有害とは限りません。

柑橘類はワックスブルームという物質を自ら分泌して表皮を保護しています。
このロウ成分は直射日光や乾燥、虫や菌から果実を守る役目があります。
それが収穫後の消毒と洗浄で落ちてしまうため、人工的にワックスを塗っているのです。

これにより外国産の果物は長距離輸送の間も乾燥から守られています。
現在は蜜蝋や植物由来の天然成分を原料としたものが主流で、口にしても大丈夫です。

それよりも毒性が強く、また洗い落とせないのが防カビ剤です。
輸入レモンは果汁のみを使うようにしてください。

どちらを使うか


有機栽培や無添加と書かれたもの以外は皮を使うのに適していません。
「さのう(果肉)」が見えるぐらいに厚く剥いて、果汁か果肉だけを使用してください。

チリ産レモンは果汁が多く、焼き魚や唐揚げ、チーズケーキの風味付けに最適です。
ただし香りや栄養素は皮に多く含まれているため、果汁に残るのは酸味だけです。

それどころか、果肉部分まで農薬が浸透していることがあります。
果汁を使用するにしてもジュースのように大量消費するのは避けた方が良いでしょう。

レモンピールや塩レモン、ジャム、レモンティーを作るには国産が推奨されています。
あるいは、防カビ剤不使用で有名なニュージーランド産もおすすめです。

ただ、ニュージーランド産は酸味が弱いため物足りなく感じる人がいます。
国産も「香りが薄い」と言われ、また糖度が高く酸味が弱い傾向にあります。

レモンに何を求めるかによって好みが別れるかもしれません。

ほかの柑橘類の皮で代用


皮を使えない時は果汁を増やしたり、果肉も使えば風味付けになります。

マリネには市販の100%果汁も使えますが、酸味が強いため使用量には注意が必要です。
また、原料が国産レモンで香料や保存料が添加されていないものを選んでください。

見つからない時は別の香酸柑橘類を使用するのも一つの手です。
柚子カボスすだちライム伊予かん清見オレンジも皮ごと使えます。
レモン以上に香りの強いものもあるので十分に代用できるでしょう。

まとめ


✔ 果物の洗い方はいくつかあるが、洗って落とせる農薬は水溶性のものだけ。

✔ 「防カビ剤不使用」を入手し易いのは国産とニュージーランド産。
  だが、この二つは酸味が弱く好みが別れる。

✔ 輸入レモンは果汁を使用する時に、皮ごと食べる時は国産を購入しよう。